―――――外伝四
        曙光を背に







 暗澹たる気分を誘う鈍色の雨雲が去り、晴れやかな冷涼さを思わせる白い満月が顔を雲尾の影から覗かせていた。
 未だしっとりとした水気が空気中に満たされている夜の帳。静粛に畏まる闇をジワジワと蝕むように広がる月明かりの下、柔らかでどこか無遠慮な淡光を全身に受けたまま、軽やかに空中を駆ける二つの影があった。その影は月の逆光に隠れているので、地上からは容姿等の仔細を伺う事ができない。ただ月光に模られるのは、軽やかに舞う人の姿だった。
 地面比べてかなりの高さではあるが密集して民家が建てられていた為、民家同士の幅はそれ程無く充分に跳躍で渡れる程度。そして、この地方の民家は陸屋根が主流である事が足場として適していた。だがどれだけ足場として頑健でも、高所である事に変わりは無い。当然、そこを地面と変わりなく疾駆するには並外れた平衡感覚と、遙かな地面を見下ろしても揺るがない胆力が必要となる。これらの点から今、軽々と跳躍し高く宙を舞い、屋根伝いを疾走している二つの影は優れた身体能力の持ち主である事が明光の中から窺い知る事ができた。

 アッサラームの街という縦横無尽に入り組んだ街路を川とすると、その内を満たす水の如く街の人々が虚ろな表情で一つの流れを造りながら進んでいた。無表情に無言で淡々と行進する様はまるで生の息吹を感じない、冷たすぎる不気味が漂っていた。
 そんな人の流れを、道に犇いている人々を一望できる建物の屋上から影の一つ…サクヤは見下ろしていた。その艶やかな黒の長髪は微かな風に靡き、月明かりに梳かされては深く幻想的な麗らかさを艶かしく夜空に広げていた。だがそんな彼女の表情に生彩は無く、固い。眉間に皺を寄せて人の波を見つめる様からは、余裕が少しも感じられなかった。
「ご覧下さい美命さま。大分人の流れが集まってきましたね。この流れの方角ですと、人々はこの街の中心…議事堂前広場に集結する事が予想できます」
 サクヤは言いながら、隣に佇む人物へ向けて言った。その視線の先の人物は両側で結われた髪の束を大きく揺らしながらコクリと頷く。
「ああ、そうだな」
 両腕を組んだまま、交差する街路を真摯に見下ろす緑灰色の眸。感情の揺らぎを素直に載せる仄かな温かさを持つ色彩を持つミコトは、眼下に広がる異様な光景を前に戦慄を感じていた。



 時は真夜中。丁度雨が上がった直後の宵闇の刻。
 この人の溢れ返る街で、ミコトはサクヤと数ヶ月振りに邂逅を果たした。
 サクヤはミコトのうじである『神宮』に古くから深い繋がりのある家系『神門』の出で、両者は主従の間柄を代々貫いてきた。その為サクヤは、歳が離れ国政を担っているミコトの実姉に代わって幼い頃より世話をしていた姉のような人だった。両親とは既に死別しているミコトとしては、子供の頃より数え切れない恩義を感じていて、また自分の欠点も数多く把握されている為に頭の上がらない思いを感謝と共に常々抱いている親しい相手だった。
 人間の流入が半端ではないこのアッサラームという街においての再会は偶然とするには余りに出来すぎている気もするが、この数奇な縁の巡り合わせに感謝しながらミコトは素直に喜ぶ。そして、アリアハンからの仲間であるソニアも交えてマグダリア商会に用意された旅籠で談笑の時を過ごしていた。
「女三人寄ればかしましい」という、ミコトの故郷にあることわざの通りに会話は弾み、旅籠の給仕に出された紅茶の香りが優しく漂う中、彼女達は久々に旅路には必ずついてまわる緊張感からの解放を実感していた。

 楽しい時間というのは、辛いそれに比べて圧倒的な速さをもって過ぎ行くと感じるのが人の情理。
 会話に華を咲かせていた時。不意に空気が割れたような感覚がした。それは聴覚を越えて、直接脳裏に痛みが叩き込まれる高域の音波のようだった。
 微かな疼きを脳裡に覚えるもそれは刹那に止み、単なる気のせいだとミコトは自己解決しようとしたが、目の前で話していたサクヤとソニアが急に卓にしな垂れかかり、額を押さえながら明らかな不調を憔悴した眸で訴え始めたのだ。



 ミコトが思案を広げていると、視界の端の方でサクヤがまたこめかみを抑えているのが見止められた。それに心配から眉を寄せて問う。
「朔夜……本当に大丈夫なのか? やっぱり宿で休んでいた方が……」
 あの異変の瞬間の後。尋常ならぬ何かがあったと直感したミコトは居ても立ってもいられず、直ぐに原因を探るべく外へ行こうとする。ここで普段ならば制止してくるサクヤが、逆に同行を申し出てきた。恐らくそれ程までに無視できない事象だからなのだろう。無理をしているのは一目瞭然であったが、不調を圧しての彼女の意志を無碍にする事もできず、またここでサクヤが引く事は無いという事も良く知っていた為、ミコトは頷くしかできなかった。
 ミコトの胸中を占めていたのは殆どが心配であったが、微かに、安堵する気持ちも確かに存在していた。
 顔から血色を失くしつつも、決然とした強い眸でサクヤはミコトに返す。
「この街の中心に向かえば向かう程、頭痛が酷くなってきているので……ですが、まだ大丈夫です。それよりも美命さまは平気ですか?」
「私は別に何ともないけど」
 逆に問い返されてキョトンと眼を瞬かせるミコトに、サクヤはフゥと溜息を零した。
「……そのようですね。この頭痛は、精神攪乱系の方術まほうに抵抗する際に齎されるものに酷似しています。恐らくですが、今この街で方術を扱える者は同じような症状に襲われているか、術中に嵌っているでしょうね」
 なまじ無意識に抵抗してしまうが故に苦しみを抱えてしまう事になる、とサクヤは愁いを帯びた眸で眼下を見下ろした。頭蓋を侵食して脳をジワジワと蝕んでいるかのような不快な傷み。抵抗さえ出来なければ傷みに喘ぐ事など無く、どれだけ楽なのか想像に難くない。
 サクヤの声色には、ほんの微かな羨みが秘められているようにミコトは感じた。
 より自然の流れに則った魔力を操る“僧侶”を職としている彼女にそう言わしめたのだから、尋常ならざる事象である事は間違いない。ミコトはそう思って更に気を引き締めた。
 その意志の表れなのか、無意識に拳を握っているミコトを見つめて、疲れた顔をしていたサクヤは薄っすらと微笑んだ。
「それにしても、美命さまの抗魔力は相変わらず高すぎるようですね」
「……そんな事は無いさ。以前に毒蛾の粉とかで正気を失った事もあったし」
 言いながらミコトの視線は自然に下がる。シャンパーニの塔、ライトエルフの地下聖域での光景が自然に脳裡を駆け巡り、まんまとそれらの術中に陥って仲間に牙を向けた自らへの憤りと求責が込み上げてきたのだ。
 アリアハン以降、ミコトがサクヤから離れていた間の経緯は旅籠で会話した際に話してあった。
 責任感が強く実直なミコトの事、何時までも胸中を苛む出来事になったのだろう。苦渋と陰鬱を浮かべて表情を曇らせているミコトを慮ってか、サクヤは首をただ横に振った。
「いいえ。それらは直接的、物理的に術の基たる媒介を体内に受けたから術中に堕ちてしまったのでしょう。もしそれらが純然に魔力を紡いで手順を踏んだ術式なのでしたら、美命さまには効果は無かった筈です。ご自身の性質をお忘れですか? 美命さまは生まれつき“破魔の神氣”の資質をお持ちです。それがエーテルを介する精神浸蝕現象に対し、強靭な抵抗力を発揮するではないですか」
「それはわかっているけど……」
 どこか饒舌に語るサクヤの言葉を受けてもミコトの心は晴れなかった。その理由もミコト自身わかっていた。
 人生を歩む上で、生を刻みながら築き上げてきた確かな拠り処としていたもの。その真価が大きく揺らいだ時、人は惑いの渦に堕ちる。信じる気持ちが強ければ強い程、それに懸ける精神の依存が大きければ大きい程。揺らぎは大きく螺旋を捲き、心の真ん中に大穴を穿つ。
 つまるところ、ミコトは自信を喪失しかけていた。その切欠は唯一つ…『勇者』を継いだ存在に、だ。ユリウスという人間の規格を超えていそうな凄絶な才能と、それを無為に消費する事無く最大限に自らの力に換えている姿を前にして。ミコトがこれまで『武闘家』として培ってきた確かな自信が大きく揺らいでしまっていたのだ。
 自分は自分、他人は他人。そう割り切ってしまえばどれほど楽だっただろうか。だけどミコトにはそれが叶わず。育ってきた環境が人の情緒と優しさに溢れ、温和だった事の副作用かもしれない。一度関わった事のある人間の事を、完全な他人事として切り離して考える事がどうしてもできなかったのだ。
 また、そんな自身の価値観と相反する価値観を、追い求めていた『勇者』であるユリウスが持っている事実が、一層心に重く圧し掛かっていた。
 暗澹が渦巻く胸中をミコトの面が如実に表す。小さく噛まれた下唇の白さにそれは現れていた。
「美命さまの抗魔力の高さは美沙凪様、そして十三賢人の位にある兄上のお墨付きなのですよ。それに何よりも、美命さまは倭国を興した神祖…『神宮』の血族ではありませんか。自信を持って下さい。……そしてどうか、ご自身を見失わないで下さい」
 だからこそ、サクヤの優しい眼差しでゆっくりと綴られる言葉は、何よりも真っ直ぐにミコトの心に届いていた。
 それが安易で単純な、子供の無聊を慰める為の言葉に近い物だとしても。自分の身近にいて、いつも見ていてくれた存在にそう言って貰えた事が何よりも嬉しかったのだ。
「そう、だったな。私は……」
 嘗て自分に誓った志を意識して、ミコトは懐から二振りの小刀を取り出す。そして滑らかに夜光に輝く朱塗りと白塗りのそれを両の手で握り締めた。親指で弾くように柄を動かすと僅かな隙間から清廉な光が輝いていた。それは自分の心に光明として深く厳かに照らし往く。
 どこまでも広がる世界。常に蓄積されていく記憶と、止まらない時間。絶えず巡り来る縁に埋没しかけていた純粋な気持ちが沸々と蘇ってきていた。

(そう……私は誓ったんだ。自分の意志で、この路を進む事を―――)






――臨める兵――



「美命! 何処に行ったの美命っ!!」
 白くふくよかな入道雲が気ままに往く晴天に、若い女性の叫声が甲高く響いていた。穏やかな空気に反する鈴鳴りのそれは涼やかな風に角を削がれて、やがて滑らかな自然の囁きに交じり合ってどこまでも遠くへと伝わっていく。
 その余韻を縁台に腰を下ろして聞き入っていた青年は、手入れが隅々まで行き届き凛とした独特の雰囲気を保っている庭園へ投じていた視線を静かに伏せる。間も無く吹き抜けた清々しい風が、青年の長く伸ばされた黒髪の一房を掬っては背中に零した。白を基に重ね羽織られた深藍の法衣をサラサラとなぞる黒髪の筋が、陽に透かされて無彩色の鮮やかさを放っていた。
 春の麗かな陽気と土の香りを孕んだ風によって、薄紅色の桜の花弁が雪のようにふんわりと舞い降る沈黙の中。
 板張りの床をけたたましく蹴り走る音が遠ざかり、遂には聞こえなくなるのを確認してか、男の頭上近くから恐る恐ると潜められた少女の声が降ってきた。
「……行った?」
「ええ、行きましたよ」
 男が穏やかに頷くのを見止め、少女は安堵の吐息を零しつつ登り隠れていた木の上から飛び降りる。大の大人よりも背丈のある樹上から軽々と地面に着地し、少女の腰まで真っ直ぐに伸びた艶やかな黒髪がフワリと羽のようにその背を飾った。
「ふぅ、弥生ヤヨイの奴もしつこいな……。でも日向ヒュウガが匿ってくれて助かったよ」
 特に着地の反動で身体を痛めた様子もなく、少女…ミコトは袖口で額に浮いた汗を拭う。溜息と共に零れた声には、どこか満足感があった。
 それを聞き止め、縁台に腰を下ろしたままの男は困ったように苦笑を零す。
「また逃げてきたのですね美命様。あまり弥生を困らせてはいけませんよ」
「……だって、方術の話は小難しいから厭だ。どうしても眠くなってしまう。方術を習うくらいなら体術を学んだ方がずっと良い」
 言われたミコトは不服そうに小さな唇を尖らせ、自らがヒュウガと呼んだ男に向けて渋面を作る。
 ミコトの幼い主張に、ヒュウガはわざとらしく大仰に首を傾げ、顎に手を添えた。
「うーん。それは困りましたね」
「……まさか日向がここに居たのって」
「はい。陽巫女ヒミコ様に召致されましてね」
「姉者が……じゃあ、ひょっとして私の授業に?」
 受け容れたくない事実を前におずおずと、上目遣いに問いただして来るミコトにヒュウガは静かに相好を崩した。
「ご明察です。朔夜が南の集落に疫病の診察に行っておりますので、その代わりにと。厳しく教えろと仰せつかって参りました」
「ああ、やっぱり……」
 がっくりと項垂れるミコトに、ヒュウガは笑みを深めた。
「美命様には才能がある。古より血族に継がれている資質の一つ…“破魔の神氣”を秘めておいでですから。その生来の巫力故に、封印されていてもなお漏れ出している八岐大蛇ヤマタノオロチの邪気を寄せ付けず、封龍殿に祭られた“八尺瓊勾玉やさかにのまがたま”に触れられるのです。あの紫洸の輝きに近付く事は他の誰にも…たとえ陽巫女様であっても今はもう不可能なのですよ」
「だけど……、だけどっ!」
 自分にしかできない事……ヒュウガの言葉はとても誉高い事を示しているのはわかっていた。だけどそれ以上に胸の奥につっかえている形にならない不安が、自分は方術を使ってはならない、と言っているような気がしてならなかったのだ。
 語彙が少ないながらも必死で言い分を紡ぎだそうと、もどかしくしているミコトを深謀の黒茶眸で見つめながら、小さくヒュウガは溜息を零した。
「…………わかりました。では美命様」
「!?」
 突然に低く変わったヒュウガの声調に、ビクリとミコトは肩を小さく揺らした。
「これより、あの霊山まで参りましょうか」
 言いながらヒュウガは遙か眼前に聳える山々の一つを指す。それは風景に溶け込んでいて、何処までも続く蒼穹の空を受け止めるように連なるその魁偉。蒼に霞む程に遠望できるそれは、一日二日程度で到達できる距離ではない事を否応なしに実感させられる。
 それを思ってかミコトは声に怪訝を混ぜた。
「行くって、これからあそこに? どれだけ距離があると思っているんだ!?」
 常識的な異を告げるミコトに、口元に人差し指を当ててニコリとヒュウガは微笑む。
「ルーラなら一瞬です」
「……なんでまた急にあんな所に?」
 有無を言わせず強引に納得させられ、ミコトは口を噤む。
「実はですね……あそこはこの地方の霊脈が集う地でして、私の修行場である庵があるんですよ。私は厳しく・・・教えろとは承りましたが、方術を教えろなどとは一言も聞いてはおりません。きっと机に向かうよりも楽しいですよ」
「! わかった、行く」
 はっきりと言葉にした訳ではなかったが、その言の中に潜む真意に気がついたのかミコトは声を溌剌に躍らせる。
 一転して眼を輝かせたミコトを見て、ヒュウガは思わず苦笑を零さずにはいられなかった。



――闘う者――



 夏の暑い日射しと、眼に痛い程に映える青空の下には蝉の声が高く鳴り響いていた。木々を緩やかに揺らす風は、草花の囁きと、それに潜んでいる生の鼓動を運んで来る。
 大自然の中の静庵の側。霊山の中腹はなだらかな丘陵が続き、広がる鮮緑の輝きの中、所々に巨大で粗野な白砂の岩礫が幾つも点在していた。その岩の一つ一つには、がっしりとした荒縄を首飾りのように架けている。そんな泰然と構える様は何処か気圧される気品と神秘的な厳かさがあった。
 自然界のありとあらゆる事物には八百万の霊魂アニマが宿り、普遍的に在りながらも絶対的な影響を齎す神聖な存在として人々に信じ、崇められていた。霊山に点在する巨岩もその一つで、それらは多くの霊魂を裡に秘め、いつか目覚める時を夢に眠っているとされる寝所と信じられていた。
 それらの中で特に大きな一つの上に座りながら、ミコトはヒュウガと対面していた。
「……」
「“ハク”とは生命の裡に秘められた活力の源…つまりは氣の力です。では生命とは何か? 生命とは生物を生物たらしめん根源的属性であり、生物とは生命属性を包括した存在…それは人間をはじめとする動物だけではありません。……この植物も、大地にも。空気にさえも“魄”は満ちている。正確には世界を普く満たす霊魂…魂魄より別たれたる物理領域の根源要素ゆえに、物質世界に存在する全てのものに内在している事に――」
「…………」
 ミコトは正座し、頭を前に傾けたまま聞き入っている。時折流れる強い風に両側で結われた髪が弄ばれるも、ミコト自身は身動ぎ一つしない。そんな余りに微動だにしない様にヒュウガは目を細め、一つ咳払いをする。
「美命様。聞いていますか? 美命様」
「っ! き、聞いていたよ」
 ハッとして顔を上げ、目線と声を泳がせているミコトの動揺振りを見て、ヒュウガは深く溜息をついた。
「……いませんね。口元に涎が付いていますよ」
「!?」
「冗談です」
「ひ、日向っ!」
 顔を羞恥で真っ赤にしながら袖口で口元を拭ってしまったミコトは、笑みを湛えていたヒュウガに向けて狼狽のままに大声で叫んだ。だがそれも更なる相手の笑みを誘う結果にしかならなかったので、ミコトは露骨に顔を歪めて話題転換を図る。
「……いつまでここでこうしていればいいんだ? いい加減、身体が痛いんだけど」
 ミコトの言う事は正しかった。ごつごつした岩肌の上で既に三時間以上も過ごしていたのだから。座るなり横になるなりしても、体力の消耗は避けられなかった。
 視線と言葉に不満を乗せてぶつけられてもヒュウガは飄々としていて、ミコトの問いなど予想済みであるかのように空々しく言った。
「そうですね。ざっと三年くらいは……」
「できるかっ!!」
 間髪入れず、勢い良く立ち上がってミコトは叫ぶ。だが気勢に反して長く正座によって苛め抜かれた脚に力が入らず、小さく呻いてよろめき再び座り込んでしまう。
 ヒュウガはその様子を苦笑しながら見つめながら続けた。
「石の上にも三年、と言うのですがね……。まあそれは冗談として、ここが地中を巡っている霊脈が一番強く地上に噴出される場なのです。それを少しでも実感する事ができるまで、ですね」
「……わかるものなのか?」
「そうやって意識して、カチカチに強張っている間は無理ですよ。ただでさえ、美命様は鈍感なんですから」
「くっ……」
 指摘されて図星だった事を改めて理解したミコトは、悔しそうほぞを噛み、両足を投げ出して再び岩の上で大の字に転がった。
 不貞腐れたミコトの様子を見て、ヒュウガは大らかに言う。
「自然体で良いんですよ。何も考えず心を無のままにただこの風に身を委ね、大地の息吹を感じ、陽の温もりを受けて自然の一部に自らの意識を溶かす……氣を扱う者にとっての究極は、自然との融合なのですから」
「自然との、融合?」
 鸚鵡返しに呟くミコトに、ヒュウガはコクリと頷いた。
「大自然に宿る霊魂の源たるは陽と陰の双極。それら二つは決して互いを打ち消しあう事は無く、常に上昇と下降、前進と後退を繰り返し万物を創造する循環たる流れとなる。その流れは秩序と混沌の両翼に導かれ、世界に指向性を与え往く」
 世の摂理を詩のように詠むヒュウガの声は穏やかだった。だがそこに潜む焦燥も、微かに現れ始めていた。
「木は摩擦により火気を生じ、火は燃焼する事によって灰土を生ずる。土は金属をその裡に埋蔵し、金属は表面に水気を集める。そして水は木を育む素となり、木は……一つ一つの細緻な要素は流れに導かれ集い、やがて大きな全と為す。その中にあって人もその流れの一部、大いなる連環を構成する一欠片に過ぎません。それ故に人は柵に囚われ、時に停滞する事はできない。それはどうしようもなく逆らう事の出来ない運命に縛されると同義……」
「日向?」
 寝転んだまま、ミコトは眉を寄せてヒュウガを見上げた。空を見つめながらのヒュウガは穏やかな口調であったが、次第に早口になりつつあるのを感じたのだ。
 蒼穹の空を見上げながら呟くヒュウガの双眸は、何処か朱に染まる秋空の夕暮れを思わせた。



――皆、陣烈れて――



 見渡す限りに連なる山々。そこを深緑に飾っていた葉も、鮮やかな朱に染まりきっていた。夕日に梳かされて一層黄昏に萌える紅葉の帳も、冷たさの混じった風に攫われては呆気なく拠り所としていた枝から落ちる。
 紅くひらひらと冷たい風に嬲られながら落ち往き、音無く地に伏す様は、何処か人の命灯にも似ていた。
「……朔夜。姉者の容態は?」
 ふすまを隔ててその奥の間で病床に就いて眠る姉を思いながら、ミコトは神妙に問う。鏡のように磨き抜かれた板張りの床にぼんやりと映る自分の顔が逼迫に歪んでいるのを否応なしに実感させられた。
 この場に居たのはミコトを除いて三人。その中で視線を投げ掛けられたサクヤは沈痛な表情を作って小さく首を横に振る。
「芳しくありません。ここ数年、“魔”の気配が強まってきています。それに呼応するように霊山に封印した大蛇の肉体の胎動が観測されましたから……。“戒魔の神氣”で大蛇を封印している美沙凪様には、その反動が直接還ってくるのですね」
「そんな……“八尺瓊勾玉”による大蛇の精神の封印も圧されていると言うのか……っ!」
 低く一人小さくごちて、決然とした光を眸に宿らせてミコトは踵を返す。その唐突さに、訝しんだサクヤが慌てて呼び止めた。
「美命さま、何処へ?」
「決まっている。封龍殿だ」
「何を仰っているんです!?」
 主従である立場を忘れ、思わず叫ぶまでになってしまった声色は、虚を突かれた思いの顕れ。無礼ではありながらミコトの二の腕を牽くまでに狼狽しているサクヤを横目に、ミコトは握り締めた自らの手を視線の高さまで上げる。
「私なら大蛇を封印しているという“八尺瓊勾玉”に触れられるんだろ? だったら、その力で奴の精神の方だけでも再び封印し直せば――」
「大蛇を甘く見ないで下さい! 嘗て大蛇の吐く烈日の焔によってこの大地は焼かれ、どれだけの人命が犠牲になったのか判らない訳ではないでしょう? ……確かに周知のとおり、嘗て魔王軍六魔将の一角“龍魔将”八岐大蛇を封じる事ができました。ですがそれは十三賢人である兄上が真実を照らすという太陽の力を秘めた“八咫鏡やたのかがみ”で精神を縛し、斬れぬ物が無いと云われる“天叢雲剣あまのむらくものつるぎ”で勇者オルテガ殿が肉体を切り裂き、美沙凪様が紫洸を放つ“八尺瓊勾玉”を以って“戒魔の神氣”で肉体と精神を乖離させこの地に封じられたのです。……いいですか? 三人掛り、三神器があって封印するのがやっとだったのですよ? 今の美命さまでは“八尺瓊勾玉”を御する事などできません。美沙凪様ですらここ数年、邪気に染まり往く封龍殿には近づけていないのですよ」
「私なら大丈夫だ」
「何を根拠に仰るのですか?」
「“破魔の神氣”を持つ私なら大蛇の邪気に当てられる事は無いって、日向が言ってくれた!」
「っ!」
 サクヤは言葉を詰まらせた。その躊躇がミコトの気勢を後押ししてしまった。
「……だって、姉者のご病気は大蛇の呪いだと皆言っている。現に大蛇の活性化と共に姉者の病状も悪化しているじゃないか! 疑う余地が何処にある。私はたった一人の肉親が苦しんでいるのを、ただこうして黙って見ている事しかできないのか!? ……無理だ。私には、できないっ!!」
 大きく真横に腕を振りかぶって、ミコトは子供の様に怒鳴る。強すぎる感情の顕現は心身を大きく昂ぶらせ、ミコトは総身を打ち震わせた。行き場の無い瞋恚に、その緑灰の大きな目は潤み光を蕩揺わせる。
 張り詰めすぎて壊れそうなそれを制するように、ヤヨイは後ろからそっとミコトの両肩に手を置いて宥めた。
「美命。落ち着いて」
 ミコトよりも年上の、童顔の幼馴染が大きな眼を揺らめかせて言ってきた。
 ミコトの焦燥振りは尋常ではなかったから、それを危ぶんでの事だったのだろう。だがそれは今のミコトに対しては逆効果だった。
 添えられた手を乱暴に振り解き、返るミコトの表情は今にも感情が爆発しそうな、泣き出しそうなまでに歪められていた。
「落ち着けだって? 弥生、こんな状況で落ち着いてなどいられるものかっ!!」
「今ここで美命が、いきり立っていたとしても状況は変わらないわ! 封龍殿と封刻石は“煉獄の回廊”の先にある。大蛇の邪気に当てられて魔物化した生物だって、あの洞窟の中に跋扈しているの。方術も碌に使えないのに……危険過ぎる、危険過ぎるわっ!」
 今度はヤヨイが力任せにミコトの両肩を押さえ、真正面から正対する。悲況に叫ぶ二人の視線は強く強く絡み合う。
 やがて根負けしたのか、或いはヤヨイの心配が伝わったのかミコトは肩を落とした。
「…………悪かった。怒鳴ったりして」
 手からミコトの身体の震えが伝わってくる。ヤヨイには取り乱すミコトの心情も痛いくらいに理解できた。だからこそ彼女を慮ってかヤヨイはただ無言で首を横に振る。
 すると今まで押し黙っていたサクヤが発した。無表情で静かに綴られるそれは何処か感情を圧殺したものだった。
「……美命さま。今、我が国には三神器が揃っている訳ではありません。“八咫鏡”はその神力を失い、それを取り戻す為に兄上が国外に持ち出したと聞きます。ですがその兄上も今は行方が知れず……」
 真摯に丁寧に綴っていたサクヤの双眸に翳りが走る。それを見て、ミコトは己が裡で昂ぶっていた燈が収まるのを感じた。
 突然の兄の失踪に、最も心を痛めているのは実の兄妹であるサクヤその人である事を思い出したのだ。家族の不幸を嘆く心は痛い程に良く判る。現にこうして昂ぶっていたのは、それを恐れての事に他ならなかったからだ。
 己の浅慮さを恥じながら、深々とミコトは頭を下げる。
「ごめん、朔夜。日向の事は本当に…………無神経だった」
「いいえ、……すみません」

 重々しい沈黙が場を支配していた。
 廊下の先の遠くから、誰かが板張りの床を踏み締めている軋み音が涼やかに伝わってきた。
 その疼音を頭の隅で捉えながら、胸中で渦巻いていた思いを一つに束ね、表情を引き締めてミコトはその場に居た全員に向けて真摯に言った。
「私は……旅に出る。修行の旅に出て、私は封龍珠の力に耐えられるぐらいに強くなる。そして、草薙の剣を扱える剣士を探し出して、大蛇を討つ!」
 誰もがそんな無謀としか言えない決意表明に唖然とし、言葉を発せずに目を丸くした。
 そんな中、ここで即座に反論できたのは最も親しいヤヨイだった。
「……美命!? 何を言っているの? 駄目よ。美命は美沙凪様の傍についていて。今の美沙凪様には、美命だけが支えなのよ」
 切に訴えるヤヨイの言葉が胸に刺さりながらも、ミコトは頭を大きく横に振った。
「だからって、私はこのまま姉者が衰弱していくのをただ指を咥えて見ていろって言うのか? そっちの方が私にはできない。少しでも、可能性があるなら私はそっちに掛ける。でないと私は……」
「でもっ――」
 その時、突然襖が開いた。
 その奥から、ミコトと良く似た顔立ちの女性がゆっくりと歩み出てくる。憔悴の相貌に反して凛とした精悍さえ感じられる強い眸は、その間にいた誰もを映していた。
「行くが良い、美命」
「姉者!? 聞いていらしたのですか?」
「美沙凪様!!」
 ミコト以外の面々が慌てて跪き、頭を垂れる。それらを手で制し、立ち上がらせてからミサナギは言う。
「たかが襖一枚隔てた程度。人が寝ているというに、そなたらの遠慮ない怒鳴り声など筒抜けじゃ」
 言いながら苦笑を零したミサナギに、その場に居た誰もが身を小さくした。
 最も身体を縮こませていたミコトが、恐る恐ると言ったように顔を上げる。
「……良いのですか? 姉者」
「良いも悪いも、それがお前の意志なのじゃろう? お前が、私の為にしようとしてくれる事……姉の私がどうしてそれを止められようか。それに、私が倒れれば次のこの倭国を導いていくのは美命、お前じゃ」
 慈愛と悲愴に染められた言葉に、ミコトは堪らず姉に駆け寄る。消耗しきっているのが人目で判る姉の身体は、何時の間にか驚く程に痩せ衰えていた。
 姉の現実を目に最悪を想起してしまい、即座にそれを脳裡から消し去るようにミコトは思いを吐露する。
「倒れるだなんて……どうかそんな事言わないで下さい」
 縋り付いてくるミコトを愛おしげに見つめながら、双眸を緩めてミサナギはミコトの頬を撫でた。
「蝕まれつつある世界を……、魔王が蹂躙している世界を見てくるが良い。そこで感じる事、思う事、触れる事の総てがお前の為になり、この国の為になる。……私の事は気にするな。お前はお前の思うがままに動け」
「……あね、じゃ」
 感極まって、ミサナギにしな垂れかかるようにミコトは床に崩れ落ちる。
 姉の身体を支え、繋ぎとめている手に知らず力が篭っていた。



――前に在り――



 見渡す地平一面が白く染められて、大地はおろか空すらも眠りについてしまったかのような錯覚に襲われる。不安を誘う暗澹の天蓋から深々と降って来る雪は冷たく、全ての鼓動を静へと誘うように絶え間なく降り積もっていった。
「美命。これを持って行くが良い」
 石造りの壮麗な城砦建築とは違った、独特な雅さと華やかな雰囲気を醸した建物の戸口に立ち、そう言ってミサナギはミコトに棒状の包を手渡す。
 初めは何なのかと好奇に満ちていたミコトも、その手に掛かる重みを検めては眼を剥いて姉を見る事となった。
「これは……姉者の護神刀“天照アマテラス”ではありませんか! こ、これは受け取れません」
 恐縮の余り返そうと手を伸ばすミコトを遮って、逆に強く柄を握らせるようにミコトの手に自らのを添えながらミサナギは首を横に振った。
「いいから、どうか持って行っておくれ。これは私の願いじゃ。これはお前の“月読ツクヨミ”と共に、お前を守る力となる。どのような時でも、お前は独りではない」
「姉者……ありがとうございます」
 ミコトが掌の中の力ある刃の存在に感慨に耽っていると、音も無く両肩に手が添えられた。優しく暖かいそれは他でもない、姉のものだった。
 何事かと顔を上げたミコトは見た。自分を通して何処か遠くを見つめているような、痛々しいまでに張り詰められた姉の顔を。
 そしてミコトは聞いた。在り続ける限り永劫に罪に苛まれ続けている、咎人の告白を。
「美命……もしも、もしも旅先で“素戔嗚スサノオ”を持つ者に会う事があったら……」
「?」
 何の事かと目を瞬かせるミコト。“素戔嗚”というのが今、己の掌にある二本の護神刀と同種の物である事は知っていた。ただそれは姉が所持している筈で、どれだけ自分がせがんでも見せてくれなかった事が幼い頃の記憶にはある。
 護神刀“素戔嗚”は姉が持っているのではないのか。何故今この時にその話題がでるのか、とミコトは胸中で思った疑念をそのまま表情に出してしまう。
 妹の無垢なる追及を垣間見たミサナギは、憂慮を優雅な笑みで覆い隠した。
「……いや、なんでもない。身体にくれぐれも気をつけてな」
「はいっ」
 その姉の慈しんだ微笑みにミコトの胸中に浮かんだ疑問は封殺され、残滓は記憶の大地の奥底に、深く深く埋没していった。

 古より独自の文化を継承し、それを体現している木造の麗雅な屋敷の戸口で、ミサナギはミコトの後姿を見送っていた。溌剌と駆ける黒の髪は、白雪の地にあって生の躍動を感じさせる。
 高床に築かれた屋敷と地面を繋ぐ階段を駆け下り、薄っすらと雪の積もった境内をミコトは走った。小気味良い音を発てて踏み固められた雪の大地は確固たる道となり、地面を蹴る度に雪は粉のように舞っては道を飾る。
 ミコトが走る境内の先には、鳥居と呼ばれる朱塗りの門扉が幾つも泰然と構えていた。その一つ目の鳥居の前で、サクヤとイズモが直立で自分が来るのを待っていてくれた。
 気を遣ってくれたのか、姉との別れの席に顔を出さなかった二人の姿を見止め、ミコトは傍に駆け寄って立ち止まる。古くから知るこの二人が自分の旅に着いて来てくれるというのだ。二人を遣わせてくれた姉に感謝を覚えると共に、信頼できる腹心を手放させた事に幾許かの申し訳なさを感じざるを得ない。
 鳥居の下で踵を返し、ミコトは大きく手を振って大声を上げた。
「行ってきます、姉者! 弥生!!」
 高床の建造物の為、境内から見上げるとそこには確かな距離を感じてしまう。それを一蹴しようとしたのだ。
 声に、ミサナギは微笑を湛えて小さく手を振っている。その横で、建物の中から出てきたヤヨイもミコトに倣って両腕を振り上げていた。
「行ってきます! 大切な、大好きな故郷!!」
 言葉の余韻が消え止まぬ内に、ミコトは屋敷に背を向けて走り出した。
 その後、決して振り返る事は無く。ミコトはただ前に向かって道を踏み締めていた。

 何時の間にか重々しい鈍色の雲間から優しい陽の光が零れ、ミコトの決起を祝福するかの如く、その小さき背に降り注いでいた―――。






「――美命さま?」
「あ、ああ…うん。ごめん、ちょっと考え事をしていた」
 突然に黙してしまったミコトを怪訝に覗き込んでくるサクヤに、ミコトは苦笑で返した。
 幸い、サクヤも追求してくる事は無く、眼下を今も流れる人の波が目指す先…即ち、このアッサラームの街の中心に座す議事堂…通称“摩天楼”に向けて厳しい視線を送っている。
「どうしますか? もっと中心へと進みますか?」
 慎重に問うて来るサクヤに、ミコトは小さく頭を横に振った。
「……いや、ここは退こう。ソニアの容態も心配だし、朔夜もこれ以上は辛いだろう?」
「お気遣い、申し訳ありません」
「いいんだ。それに多分、この異変の原因を前にしても私には何も出来ない気がする」
 無力さに陰鬱になるのを遮る為に、ミコトは空を見上げた。
 夜を満たす月光を背景に、遠く聳える摩天楼が影に染められていた。その冷然とした異様な佇まいは見る者に否応無しに畏怖を抱かせる。もしも日常的な喧騒が今この街にあるのならば、こんな事は露にも思わなかったのだろう。所詮は感傷に過ぎないが、それはこの街で最も欠如しているであろう自分の意思を保持している事に他ならない。
「美命さま……」
「ん? どうしたんだ」
 無言で自分を見つめてくるサクヤの視線に気がついたのか、ミコトは微かに眉を寄せた。
「しばらく見ない間に、成長されましたね。氣の使い手としてだけでなく、その気構えも」
「そ、そうか?」
 真正面から、真顔でそう言われると気恥ずかしいものがある。くすぐったくなって、鼻の頭をミコトは指先で掻いた。そう感じる辺りまだミコトの精神は成熟しきっていないのだが。
 そんなミコトを眺めながら、にこりともせずにサクヤは頷く。
「ええ。以前の美命さまでしたら、この現状を見て憤り、迷わずにあの人の群れの中に飛び込んで片っ端から力技で正気の戻そうとしたでしょう?」
「誰がそんな無謀な事するかっ!」
 余りにもあんまりな言い様に擁いていた気恥ずかしさは一瞬にして吹き飛び、瞬く間に不服に顔を歪めながらミコトは叫んだ。
 だがそんなミコトの憤りも何処吹く風で、サクヤは素知らぬ顔で続ける。
「いいえ、以前の美命さまは物事を真っ直ぐに捉えすぎるが余り、勇気と無謀を履き違えておられましたから。考えるよりも先に身体が動いたでしょう?」
 思い当たる節は沢山ありますからね、と最後に妖しい笑みで締めくくるサクヤに、ミコトはうっ、と言葉を噤んで喉を鳴らす事しかできなかった。



 そう……私一人では何も出来ない。昔に、そして今に。一人でできる事の限界を学んだから。
“人”という文字が指し示す真なる理。それは互いに支え合い助け合う事だ。故に人との繋がりは大切で、心を共有できる仲間とは得がたい宝であると常々思う。

 人の本質がそうある限りきっとこれからも私は誰かを助け、助けられて進んでいくのだろう。この双肩に背負ったものを全うする為に。
 今でも鮮明に思い出せる、遠いあの日。私はあの日出ずる空に誓ったのだから。




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